TerryTrilla

作曲

編曲とは — 作曲との違い、やり方とコツ

編曲とは、すでにあるメロディと和音を「どう鳴らすか」を決める仕事です。どの楽器が何を弾くか、どこで増やしてどこで抜くか、間奏はどうするか — 曲そのものは変えずに、聞こえ方だけを組み立てます。同じ一曲が弾き語りにもバンドにもオーケストラにもなるのは、この工程があるからです。

This page is part of the guide to songwriting.

作曲・編曲・ミックスの違い

作曲はメロディと和音を作ること。鼻歌とコード進行があれば、曲はもう存在しています。編曲はそれを誰がどう鳴らすかを決めること。ミックスは録れた音の音量・定位・質感を整えることで、演奏内容そのものには触りません。

境目が分かりにくいのは編曲とミックスの間です。目安はこうです。音符が変わるなら編曲、変わらないならミックス。ギターを一本増やすのは編曲、鳴っているギターを左に振るのはミックスです。

英語では arrangement と言い、編曲を専門にする人を編曲家(アレンジャー)と呼びます。日本のポップスでは作曲者と編曲者が別人であることが多く、クレジットに両方が並ぶのはそのためです。

編曲で決まること

編曲が決めるのは、だいたい四つです。楽器編成 — 誰がいるか。密度 — 同時に何が鳴っているか。役割分担 — 誰が旋律で、誰が和音で、誰が低音で、誰がリズムか。時間の設計 — どこで増やし、どこで抜くか。

このうち効果がいちばん大きいのは抜くことです。サビを大きく聞かせたいとき、サビを足すより、その直前を減らすほうが確実に効きます。音量ではなく落差が「大きい」を作るからです。

逆に、初心者の編曲がうまくいかない原因もほぼ一つで、全部の楽器が全部の場所で鳴っていることです。どれも聞こえず、どれも目立たない。減らす勇気が技術より先に要ります。

ギターとピアノでの編曲のやり方

ギター一本で編曲するなら、低音・和音・旋律を三つの帯に分けるのが基本です。親指が六〜四弦で低音、指が三〜一弦で和音と旋律。三つを同時に鳴らそうとせず、交互に出すと一本でも編成に聞こえます。クラシックギターの編曲がまさにこの考え方です。

ピアノも同じ発想で、左手が低音と和音、右手が旋律。ただしピアノは音域が広いぶん、離すことが効きます。低音は低く、旋律は高く、真ん中を空ける。両手が中央に集まると、何を弾いても濁ります。

バンドに広げるときも原理は変わりません。ベースが低音、ギターかキーボードが和音、ドラムがリズム、歌が旋律 — 一本でやっていた三つの帯を、人に割り当て直すだけです。役割が重なったときは、どちらかが譲ります。

既存曲の編曲と著作権

編曲にはもうひとつの意味があります。既存の曲を別の編成に移すこと — リストがバッハをピアノに、あるいは歌曲をクラシックギターに置き換えるような仕事です。日本語の「編曲」はこの意味でよく使われ、楽譜を探している人の多くはこちらを指しています。

ここで避けて通れないのが著作権です。日本の著作権法では編曲権が著作者の権利として独立して定められており、保護期間内の曲を編曲するには原則として権利者の許諾が要ります。自分の演奏のために手を加えて弾くぶんには私的使用の範囲ですが、公開・配布・販売となると話が変わります。

保護期間の切れた曲(バッハやリストの原曲など)は自由に編曲できます。クラシックの編曲譜が豊富なのは音楽的な理由だけではなく、これも理由のひとつです。現行曲を扱うときは、演奏する場所が管理団体と契約しているかどうかを先に確かめるのが安全です。

進め方とコツ

順番を決めておくと迷いません。まず骨格 — 低音と和音だけで最後まで通す。次に役割 — 旋律を誰が持つかを場所ごとに決める。最後に装飾 — 間奏、オブリガート、音色。装飾から始めると、必ず途中で作り直しになります。

セクションごとに一つだけ変えるのも効きます。二番は一番と同じ編成のまま、ドラムのハイハットだけ開ける。増やすのは次のサビまで取っておく。変化が一つずつ置かれていれば、曲は最後まで前に進みます。

AIに編曲させる道具も増えましたが、出てくるのは平均的な密度の伴奏です。どこを抜くかという判断 — つまり編曲でいちばん効く部分 — は今のところ人が決めるほうが確実です。土台を出させて、抜く場所を自分で決めるのが現実的な使い方です。

Where to go next

Arrangement decides how each section sounds; the order of those sections is song structure. The instruments themselves — what each can do and how they combine — are covered by instrumentation, and how loud each part plays is written as dynamics.

よくある質問

編曲とは何ですか

すでにあるメロディと和音を、どの楽器がどう鳴らすかを決める仕事です。楽器編成、密度、役割分担、どこで増やしどこで抜くかを組み立てます。曲そのものは変えません。

作曲と編曲はどう違いますか

作曲はメロディと和音を作ること、編曲はそれをどう鳴らすかを決めることです。日本のポップスでは別の人が担当することが多く、クレジットに両方の名前が並びます。

編曲とミックスの違いは何ですか

音符が変わるなら編曲、変わらないならミックスです。ギターを一本増やすのは編曲、鳴っているギターを左に振るのはミックスにあたります。

編曲に著作権は関係しますか

します。日本の著作権法では編曲権が著作者の権利として定められており、保護期間内の曲を編曲して公開・配布するには原則として許諾が要ります。自分で弾くだけの私的使用は別です。保護期間の切れた曲は自由に編曲できます。

ギター一本でも編曲はできますか

できます。低音・和音・旋律を三つの帯に分け、親指が六〜四弦、指が三〜一弦を担当します。三つを同時に鳴らさず交互に出すと、一本でも編成に聞こえます。

編曲のコツはありますか

抜くことです。サビを大きく聞かせたいなら、サビを足すより直前を減らすほうが効きます。順番は骨格、役割、装飾の順で、装飾から始めると必ず作り直しになります。

抜いた版と足した版を、並べて聴く

スタジオで同じ八小節を二通り作ってみてください。全部鳴っている版と、サビ直前だけ抜いた版。どちらが大きく聞こえるかは、音量ではなく落差が決めていると分かります。