楽譜を読む
初見演奏と譜読み:はじめて見る楽譜を弾く
初見演奏とは、はじめて見た楽譜をその場でテンポどおりに、止まらずに弾くことです。曲を仕上げる練習とは別の技術で、伸び方も違います。週に一度長く取り組むより、毎日短い時間だけ、いつも新しくて自分の実力より易しい楽譜に触れるほうが確実に伸びます。
このページは楽譜の読み方ガイドの一部です。
譜読みと初見演奏はどう違うか
曲を仕上げる作業は「戻る」ことでできています。一小節を繰り返し、運指を決め、数日かけて組み立てます。初見演奏はその戻りを禁じます。楽譜は一度だけ受け取り、拍を保ち、こぼれた音はこぼれたままにします。間違いを直そうと止まった時点で、それは初見ではなく練習です。
上手に弾ける人が初見は苦手、ということが起きるのはこのためです。長年の練習は「繰り返して解決する」やり方を手に教えますが、初見はまさにそれを封じます。測る物差しも別で、はじめて見たページのどれだけを、リズムを崩さずに一回目で音にできるか、が問われます。
目は手より先を見る
よく読める人の視線は、手より一小節ほど先にあります。手は、目がすでに通り過ぎたところを弾いているわけです。いま鳴らしている音を見ていては次の準備をする時間がなく、跳躍のたびに不意を突かれます。
この距離は練習でつくれます。弾き終えた部分を紙や手で隠し、戻る場所をなくすのが一つ。もう一つは、一小節を読み、目を離し、記憶で弾く方法です。保てる長さがそのまま先読みできる長さになります。一週間ほどは落ち着きませんが、やがて何も感じなくなります。
音符ではなく「かたち」で読む
速く読める人は一音ずつ名前を確かめてはいません。三和音、音階の走句、オクターブ、見慣れた終止形を見て、手がかたちごと受け取ります。ページは百個の記号ではなく十数個のまとまりになります。速く読んでいるのではなく、読む個数が少ないのです。
その「かたち」は、すでに使っている和声の知識から来ます。和音、アルペジオ、音階の断片、定番の低音型で調性音楽の大半は説明がつきます。覚えた音階や和音が一つ増えるたびに、目が一度に取れるかたちが一つ増えます。読譜の練習をしなくても、和声を学ぶと初見が良くなるのはそのためです。
まずリズム、止まらないこと
初見では、音を間違えても失うのは一音ですが、止まれば一節すべてを失います。合奏なら止まることだけが取り返しのつかない失敗です。相手は待てないからです。優先順位は拍、リズム、外声、最後に内声。何かを捨てるなら、拍ではなく内声を捨てます。
弾き始める前の十五秒が効きます。調号、拍子、そのページで最も細かい音価、いちばん高い音と低い音、あとで戻ってくる臨時記号を見ておきます。テンポは冒頭ではなく、いちばん難しい小節に合わせて決めます。途中で崩れる原因のほとんどは、一小節目でテンポを決めたことにあります。
譜読みを早くする練習のしかた
効くやり方は地味です。一日十分、毎回ちがう楽譜、自分の演奏レベルより二段階か三段階やさしいもの、一回だけ弾いて繰り返さない。長い時間を週一回とるより、この短い毎日のほうがはるかに伸びます。
いちばん多い失敗は難易度です。ふだんの曲と同じ難しさの楽譜を初見に使うと、ただの遅い解読になり、初見の力は伸びません。材料は知らないものであれば何でもよく、初見用の曲集、賛美歌集、民謡集、やさしい編曲、著作権の切れた楽譜が使えます。譜読み練習アプリが選ばれるのも、毎回新しい楽譜という条件が紙では整えにくいからです。規則は一つ、一回通す、止まらない、次へ。気に入った曲は明日きちんと譜読みすればよく、それは別の作業です。
つぎに読むなら
初見演奏は技術で、その土台になる記譜はまず体に入れておきたいところです。音符の長さから始めてください。ギターなら次はギターの楽譜とTAB譜の読み方で、五線とTABを並べて読みます。